『食とマクガバンレポート』

先日、廃棄食品偽装が問題になりました。中国に比べたら安全と思われていた日本でも産地偽装や異物混入、賞味期限切れの廃棄物が出回るなど食の安全を脅かすニュースには事欠きません。私たちにとって『食』とはどのようなものでしょうか。ただカロリーを得られれば良いものなのでしょうか。『食』について勉強していくうちに、食事によって健康はもちろんのこと、メンタルにまで大きな影響を及ぼすということがわかってきました。どんなに能力がある方でも心身ともに健康でなければその能力を存分に発揮することはできませんし、充実した人生を歩むこともできないでしょう。

ということで、今回から『食』というテーマでブログを書いていきます。食育というとおこがましいので、一実践者、一研究者としてざっくばらんに書かせていただきたいと思います。

突然ですが、坂東三津五郎さん、愛川欽也さん、今いくよさん、今井雅之さん、川島なお美さん、と聞いて何を思い浮かべますか?

みなさん芸能人なのでよくご存知の方が多いと思いますが、残念ながら昨年ある病名で亡くなられた芸能人の方々です。それは部位は異なるものの皆さん実は【ガン】で亡くなられたのです。

食vol1-1

芸能人の方が亡くなるのはショッキングなことですが、このガンという病気、長年にわたって日本人の死因第一位を守り続けるどころか、年々その割合は増え続けています。

では、ガンで亡くなる方が多いのは日本特有の現象なのでしょうか。次のグラフを見ていただくと、先進国ではどの国も高い死亡率で推移していることがわかります。しかしながら、このグラフにおいて特徴的なのですが日本だけが右肩上がりになっているのにお気づきでしょうか。しかも男性においては、今やアメリカ人よりも日本人の方がガンによる死亡率が高くなっているのです。

食vol1-2

これは、いったいどういうことなのでしょうか。実はアメリカにおいては遡ること1970年代にガンの死亡率の増加に伴い医療費も急増。 医療の先進国であるアメリカで患者も医療費も増え続けているのはおかしいと当時のフォード大統領がジョージ・マクガバン上院議員を栄養問題特別委員会の委員長に任命し、国家的な大調査を行って、原因を追求することにしたのです。世界中の人々の食生活と病気と健康状態との相関関係を調査し、2年間の調査の結果1977年『マクガバン・レポート』を発表しました。

その内容とは、『がん、心臓病、脳卒中などアメリカで重大死因となっている病気は現在の間違った食生活が原因になって起こる【食原病】である』というものでした。20世紀初頭のアメリカではガンや心臓病は珍しい病気でしたし、昔は腸チフスや結核など細菌による伝染病での   病死が多く、ガン、心臓病、脳卒中は皆無に近かったのです。また、1970年代当時でもアフリカやアジア、中近東などの発展途上国ではガンや 心臓病、脳卒中はとても少なかったといいます。そして、アメリカをはじめとする先進国と当時の発展途上国で大きく違ったのが食生活の違いだったのです。

要約すると、『ガンなどの病気が増加した理由は、動物性食品を中心とした高カロリー高脂質な食事であり、これはくすりでは治らない。われわれはこの事実を認めて早急に食生活を見直す必要がある』ということが突きつけられた内容でした。このように近代西洋医学では、病気は    くすりで抑えたり治したりするものだと考えられていましたが、本来病気を治したり、病気に負けない根本は体の持っている本来の修復力(免疫力)なのだということが見落とされていたのです。なお、日本でも成人病や生活習慣病と世間でも言われ始めてはいましたが、さまざまな生活習慣と相関が大きい病気であると認識されており、食生活だけに焦点が当てられることはありませんでした。

さらにアメリカの研究は続きます。マクガバン・レポートの【食原病】という結論が中国でも科学的に証明されるかを調べるため、1983年からコーネル大学、オックスフォード大学が中国と合同で史上最大の疫学調査チャイナ・スタディを行ったのです。これは、別名『第2のマクガバン・レポート』と呼ばれます。

食原病と言われるこれらの疾患は、低カロリー・低脂質の食事をしていた農村部では確実に少なく、先進国と変わらず高カロリー・高脂質な食事をしていた都市部では多いという結果でした。つまり、アメリカ人であろうと中国人であろうと『プラントベース(植物性食品中心)のホールフード(未精製、未加工の食べ物)で構成された食事』をしている人はこれらの病気を予防・回復していることが統計的に示されたのです。よって、ガンをはじめとするこれらの病気は遺伝的なものというよりも、食事と高い相関性があるという結論になったのです。

これを機にアメリカでは人々の“意識”が変わり、食事が見直されるようになりました。これによって、ガンなどの死亡率の増加を食い止めることに成功したのです。

一方、日本はというと、戦後に食の欧米化が進み、肉類乳製品加工食品などの普及によって伝統的な日本食が失われるのに比例し、先のグラフに示したようなガン、心臓病、脳卒中といういわゆる【食原病】が増加の一途をたどることになるのです。そして現在、生活習慣の中で食事が最も大事な要素かもしれないというマクガバン・レポートの結論を“知る”ことなく、また知っていたとしても病気はくすりや手術で治すものだという“意識”を変えることなく、はたまた“実践”をすることなく過ごしている限り、日本でガンが増え続けていくのかもしれません。

今こそ私たち日本人は“食い改める”時期に来ているのではないでしょうか。

★まとめ

・日本の死亡率一位はガンであり、“先進国で唯一”右肩上がりを続けている。

・アメリカでガン、心筋梗塞、脳卒中などの【食原病】に歯止めかかったのはマクガバンレポートがきっかけだった。

・【食原病】の原因は『動物性食品を中心とした高カロリー高脂質な食事』にあり、『プラントベースのホールフードで構成された食事』で 防ぐことができる。